【映画】『エイリアンロムルス』のおやじギャグ、英語と日本語でこんなに違う?
『エイリアン:ロムルス』には、主人公レインの弟、アンドロイドのアンディによって様々な英語の言葉遊び(ジョーク)が随所に散りばめられています。
しかし、英語のダジャレは日本語にそのまま訳すとニュアンスが変わってしまうことが多いため、どのようにローカライズされているのかが気になるポイントです。
今回は、その直訳と日本語字幕での違いを解説します。
閉所恐怖症の宇宙飛行士はスペースが必要
【5:46~6:06】食事を摂っているレインのテーブルにアンディが駆け寄り一言
Did you hear about the claustrophobic astronaut?
He need space
閉所恐怖症の宇宙飛行士の話を聞きましたか?
彼には「スペース(空間)」が必要だったんです。
閉所恐怖症の宇宙(スペース)飛行士は空間(スペース)が必要。
ギャグ解説
洋ギャグ
このギャグのポイントは、「space」という単語の二重の意味です。
「space」は「宇宙」と「空間」の両方を意味するためかなり分かりやすいギャグになっています。
邦ギャグ
日本語では「宇宙」と「空間」が別の単語であるため、この言葉遊びをそのまま訳すのは難しいです。そのため、翻訳では「スペース」というカタカナ語をそのまま使うことで、ある程度のニュアンスを維持しています。ただし、英語のような自然なダブルミーニングの面白さはやや薄れてしまっています。
2. とんでもない浪費
【5:46~6:06】【閉所恐怖症の宇宙飛行士はスペースが必要】に対して「つまらないギャグはいらない」とあしらうレインに続けざまに
I just spent my full shere on a belt that wont fit.
Huge waist.
サイズが合わないベルトに全財産を費やしてしまった。
ウエストが大きい
閉まらないけど高いベルトを買った。
太っ腹だ。
ギャグ解説
洋ギャグ
このダジャレは、「waste(浪費)」と「waist(ウエスト)」の同音異義語を利用しています。
- 「I just spent my full share on a belt that won’t fit.」は「サイズが合わないベルトに全財産を使ってしまった」という意味。
- 「Huge waist.」は「とてつもないウエスト(大きなウエスト)」と「とてつもない無駄遣い(waste)」の二重の意味を持つ。
邦ギャグ
日本語訳では「太っ腹」という表現を使い、「金を惜しまない」意味を持たせることで、ユーモアを再現しようとしています。ただし、英語のような音の遊びはなくなっているため、直訳と比べると別のニュアンスのジョークになっています。
おいしいフード
【5:46~6:06】「もらっていい?」と聞きながら、返答を待たずにアンディの食事を口にしたレインに一言
Maybe it’s ‘cause, l’m on this seafood diet.
I see food, I eat it.
私は食べ物を見ると食べてしまいます。
それはたぶん、シーフードダイエットをしているからです。
シーフードは食べすぎちゃう
おいしいフードだから
ギャグ解説
洋ギャグ
ジョークのポイントは、「seafood(シーフード)」と「see food(食べ物が見える)」の言葉遊びです。「シーフードダイエット」と言いながら、実は「食べ物が見えたら何でも食べる」というユーモアになっています。
邦ギャグ
「おいしい」の”しい”(シー)、とフード(食べ物)をくっつけた、おやじギャグらしいギャグです。
盲目の鉱夫
【10:33】停泊している宇宙船のハッチを開けながらタイラーがアンディに問いかける。
タイラー「Why’d the blind miner fall down the well?」
アンディ「Why?」
タイラー「Cause he couldn’t see that well.」
タイラー「なんで盲目の鉱夫は井戸に落ちたんだ?」
アンディ「なんで?」
タイラー「井戸が見えなかったからさ」
タイラー「井戸の底が見えない」
アンディ「なに?」(どういうこと?)
タイラー「深いど」(深い井戸 → 「深いど(ダジャレ)」)
ギャグ解説
洋ギャグ
このジョークのポイントは、「see that well」が
- 「よく見ることができない」
- 「その井戸(well)が見えない」。
という二重の意味を持っていることです。
邦ギャグ
日本語では「see that well」の言葉遊びを直接再現するのが難しいため、代わりに「井戸」と「深いど(深いぞ)」をかけたダジャレに変更されていると思われます。
”思われる”というのも地下水をくみ上げるための”深井戸”というのがあります。
地下水であるため、深く底が見えないことから”深井戸”をオチに使う可能性もありますが、字幕ではひらがなで”深いど”になっているので「北海道はでっかいど~」的な前者の内容かと思われます。
左半身を失った
【30:00】暗い雰囲気をアンディがギャグで和らげようとする
Did you hear about the miner who lost his left side?
He’s all right.
左半身を失った鉱夫の話を聞いた?
彼は「大丈夫」だよ / 彼は「全部右側」だよ。
ある人が左半身を失ったけど、右だけで大丈夫(オール・ライト)
ギャグ解説
洋ギャグ
ここでのジョークのポイントは、「all right」が
- 「大丈夫」(問題ない)
- 「すべて右」(left を失ったので right しか残っていない)
の二重の意味を持っていることです。
邦ギャグ
他のギャグシーンでも通ずるところがありますが「右だけで大丈夫(オール・ライト)」となっている通り、ある程度こちらの知識を求められたギャグとなっています。
なぜモンスターは道化師を食べないの?
【1:27:47~1:28:05】複数のエイリアンに追い詰められる目前のレインとアンディ。死を悟ったレインがアンディのギャグで安らぎを求める。
Why don’t monsters eat clowns?
Cause they taste funny.
なぜモンスターは道化師を食べないの?
だって、彼らは「おかしな味がする」からさ。
道化師がお菓子をくれた
おかしな味がする
ギャグ解説
洋ギャグ
ここでのジョークのポイントは、「funny」が
- 「変な」(味が変という意味)
- 「面白い」(道化師は面白い存在)
の二重の意味を持っていることです。
邦ギャグ
日本語字幕では、「お菓子」と「おかしな」の語呂を使い、ダジャレとして成立させています。英語の「funny」の二重の意味を直接再現するのは難しいですが、「おかし(菓子)」と「おかしい(変)」をかけることで、日本語らしい言葉遊びに変えています。
クローン技術とダジャレ
【1:27:47~1:28:05】
I don’t understand cloning at all.
That makes two of us.
クローンのことが全く理解できない。
それで二人になったね。 / 私も分からないよ。
クローンで作った野菜は?
瓜2つ
ギャグ解説
洋ギャグ
このジョークは、「That makes two of us.(それで2人だ)」というフレーズが
- 「クローンが作られると2人になる」(クローンの概念を使ったダジャレ)
- 「私も同じだ」(同意の意味)
という二重の意味を持っていることです。
邦ギャグ
日本語訳では「瓜二つ」という慣用句を利用し、クローン=そっくりなもの、というダジャレに変えています。英語のような直接的な言葉遊びとは違いますが、日本語独自の表現でジョークのニュアンスを再現しています。
無重力の本は置けない?
【1:27:47~1:28:05】
I read a great book about zero gravity
-I just couldn’t put it down.
無重力についての素晴らしい本を読んだんだ。
全然やめられなかったよ。
無重力に関する本が面白くて・・・
下に置けない
ギャグ解説
洋ギャグ
ここでのジョークのポイントは、「put down」が
- 「本を置く」(物理的に下に置く)
- 「読むのをやめる」(本を夢中で読み続ける)
の二重の意味を持っていることです。
無重力(zero gravity)の本だから、本当に下に置くことができない というユーモラスな矛盾を作っています。
邦ギャグ
この訳では、「置く(物理的に下に置く)」と「やめる(本を置く)」の意味を重ね、日本語でも言葉遊びとして成立させています。英語の「put down」のダブルミーニングを、日本語の「置く」で再現している点が秀逸です。
まとめ
英語のダジャレは、発音の類似性や多義語を利用したものが多いため、日本語にそのまま訳すのは難しく、意訳が必要になります。『エイリアン:ロムルス』でも、ダジャレのニュアンスを残しつつ、日本語でも通じる表現に変える工夫がなされていました。
こうした翻訳の違いを知ると、英語の言葉遊びの奥深さと、それを日本語にローカライズする難しさがよく分かります。映画を観る際には、英語のオリジナルセリフと日本語字幕の違いを比べてみると、また違った楽しみ方ができるかもしれません。
【おまけ】「エイリアンロムルス」の小ネタ
『エイリアン:ロムルス』は、シリーズのファンにとって見逃せない多くの小ネタやオマージュが散りばめられています。
以下に主要なものをまとめてみました。
アンドロイド「アンディ」のセリフと行動
アンディがビヨンから「人間もどき」と呼ばれた際、「合成人間と呼ばれる方が好きだ」と返答します。これは『エイリアン2』でビショップがリプリーに言ったセリフと同じです。また、アンディがエレベーターシャフトでレインを救出する際の「彼女に近づくな、バケモノ!」という叫びは、『エイリアン2』でリプリーがエイリアン・クイーンに放ったセリフのオマージュです。
科学責任者「ルーク」の登場
上半身だけの姿で発見された科学責任者ルークは、その顔がアッシュに酷似しています。これは『エイリアン』でイアン・ホルムが演じたアッシュを思わせるカメオ出演的な演出です。
武器と装備のオマージュ
レインが手にするF44AAパルスライフルは、『エイリアン2』で登場したM41Aパルスライフルの前身とされています。また、タイラーがレインに銃の使い方を教えるシーンは、ヒックス伍長がリプリーに銃の扱いを教えた場面を彷彿とさせます。
エイリアンのデザインと演出
本作に登場するエイリアンは、『エイリアン』でリプリーに撃退されたゼノモーフから派生したもので、リプリーが放った銛が刺さったままになっています。また、洞窟のような巣の壁に宿主が埋め込まれる地獄絵図のようなビジュアルは『エイリアン2』と同じ手法が用いられています。
クライマックスの演出
クライマックスでは、レインが下着姿で行動するシーンがあり、これはシリーズのお約束ともいえる演出です。さらに、レインの航海日誌で映画が締めくくられる点も、リプリーの伝統を受け継いでいます。
これらの小ネタやオマージュは、シリーズのファンにとって懐かしさと新鮮さを同時に感じさせる要素となっています。『エイリアン:ロムルス』を鑑賞する際は、ぜひこれらのポイントにも注目してみてください。